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 私はこれを、頭と心の接触不良だと思っている。 接触不良が起こると、たちまち私の心は苦しく、悲しくなってしまう。 この現象と、私はまだうまく折り合いをつけられないのだ。  そう、私は彼、山田さんに好意を抱いている。 好意なんて、そんな生温いものじゃないのかもしれない。 私は彼を好いている。 だから、雑音が生じるとき、私は苦しくなってしまう。 趣味も価値観も合わない二人の、一体何が互いを触れ合わせるというのだろうか。  どこか懐かしく、メロウな曲の中で、私たちは話した。 彼の大学の話、血液型の話、趣味、そんな当たり障りのない会話。 ふと気付くと、窓の外はすっかり日が落ちかけている。 「外、暗くなってきたね、月が出てる」 私がそう言うと、彼も窓の外を眺めた。 そのまま数秒、見つめ続ける。 どこか焦がれた横顔をした彼は、 「月みたいな人なんだ」 と、小さな声で呟いた。 「お姉さん、月みたいな人なんだ」  途端に、私の心臓がどきっと脈打つ。 それは、悪い意味で。 嘘を暴かれたときのように、鼓動が大きく一度跳ね上がると、後は緩やかに冷たくなっていく。 小さな接触不良はあれど、それでも今まで浮ついていた心が、急激な速度で落下する。  二人でいるこの瞬間。 僅かな時間も、彼の心は少しも私のものじゃない。 それでも私は、気持ちに反して器用に笑うことができた。 .
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