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入学式。
(目線:黒子テツヤ)
「行ってきます。」
ボクはそう告げ、家を出た。今日から晴れて高校生になる。
中学の時沢山の辛い事を経験して、青峰君達キセキの世代を倒すと決めた。
だから誠凛高校ではキセキの世代にボクのバスケを認めさせたい、それだけ考えていた。
火神君に出会うまでは───。
──桃井さんから電話だ。
「もしもし。」
“もしもしテツ君!”
「どうかしたんですか?」
“ううん!今日…入学式だね!テツ君と同じ高校行きたかったんだけど、ごめんね?あいつ…ほっとけなくて…”
「いえ…青峰君に桃井さんは必要だと思いますよ。」
“そうかな…”
「桃井さんは青峰君の幼なじみなんですから。」
“テツ君…ありがとう。あ…時間ないな……じゃ、テツ君、新しい学校、頑張ってね!”
「桃井さんも、頑張って下さい。」
“ありがとう!じゃあ、またね!”
「はい、また。」
桃井さんとの電話を切る。
空が青い。3年前もそうだった。
これからまた、新しい生活が始まる。
──入学式。
「1年B組5番。火神大我。」
ボクの前の出席番号の人が呼ばれた。
「…いっす。」
だらしない感じがする。制服も少し着崩している。
ボクの火神君のこのときの印象は良くなかった。というより、覚えておく程の人ではなかった。
「1年B組6番。黒子テツヤ。」
「はい。」
返事をしたときに気が付く。
皆ボクの存在に気付いていない。
「どこ?」
「いなくない?」
こういう声が周りから聞こえる。
いつものことだから気にせず座る。
すると隣に座っていた火神君?…が話しかけてきた。
「今呼ばれたのお前だろ?ちゃんと返事しねえと気付いて貰えねえぞ。」
「…はあ。」
「んだよ!ったく!」
火神君は立ち上がると、ボクの手を掴んでボクごとステージへ上がった。
周りの人達がざわつく。
「黒子?ってこいつだ。ちゃんといるからあんまちゃかすな。可哀想だろ。」
余計なお世話だと思った。影の薄いボクはいないと思われるのになれている。でも火神君はボクのことちゃんと考えてくれたんだ。
嬉しかった。
このとき、ボクは既に火神君を好きになっていたのかもしれない。
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