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「火神君…ありがとうございます。」
「は?いや…お前があまりにも影薄すぎて見てるこっちが苛ついただけだよ…」
「でも、ありがとうございます。」
「べっ…別に…。てか、お前…なんでそんな影薄いんだ?」
「し…静かに。式中は私語厳禁です。」
「しごげんきん……??」
「……もういいです。」
ボクは火神君が馬鹿だという事を理解し、注意するのも止めた。
──式が終わって帰る時、ボクはリストバンドを見つめる。
荻原君がくれた大切なリストバンド。
小学生の時に知り合ってからずっと片思いをしていた相手を、全中の決勝戦で傷付けた。荻原君の辛さは計り知れない。ボクの中で荻原君に対して罪悪感が生まれていた。
でもボクはその罪悪感を乗り越えて、ボクは強くならなくちゃいけない。
ボクのせいで荻原君はバスケを辞めた。でもボクはこのリストバンドと共に、荻原君の分まで戦わなきゃ駄目なんだ。そう思った。
──また桃井さんから電話だ。
“ごめんね?何度も。”
「いえ、大丈夫ですよ。」
“テツ君、やっぱり…バスケ部入るの?”
「…はい。」
“そっか……わたしもマネージャーやろうと思うんだ。”
「桃井さんが敵だと、手強いです。」
“そんなことないよー!”
「いえ…中学の時は桃井さんに沢山助けられましたよ。」
“へへ……そうかな?”
「はい。本当にありがとうございました。」
“うん。テツ君もバスケ、頑張ってね。わたし大ちゃん捜さなくちゃならないからまたね。”
「はい、青峰君によろしく伝えて下さい。では、また。」
青峰君……彼はボクのパートナーみたいな存在だった。だけど、力が開花すると一変、青峰君に敵はいなくなって、青峰君は好敵手を失った。
青峰君も色々考えて、現在に辿り着いたのかもしれない。でも、それでもボクは青峰君にただ、笑ってプレーしてほしい。だから、バスケを楽しんでほしい。青峰君には、バスケの好敵手を諦めないでほしい。練習して上手くなる事の意味を履き違えないでほしい。青峰君はボクの大切な人だから。
明日から仮入部期間が始まる。
勿論バスケ部に入部する。
キセキの世代を倒すんだ。
そして、
ボクのバスケを皆に認めさせるんだ。
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