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プレイルームの入り口から賑やかな声が聞こえた。楽しそうなその声に菜乃香も急いで加わった。
さっきは五人くらいだった部屋にはいつの間にか沢山の子が集まっている。
段上には白衣を着たピエロがバルーンを次から次へと、プードルやウサギに変えていった。菜乃香にはそれらが魔法のように映り、目を輝かせた。
「わあ!今度はくまさんだ!あ、菜乃香ちゃんおいで」
仲良し看護師の澤見は戻った菜乃香を見つけ、手で呼んだ。
「ほら、すごいでしょ!ピエロさんが色々作ってくれてるの」
澤見はしゃがみ、菜乃香の目線でピエロを指差した。白衣のピエロは笑顔で菜乃香を歓迎すると、手にしていたくまのバルーンを差し出した。
「わあ!ピエロさんがくれるって!」
ピエロというそれは白い顔に大きい真っ赤な口と赤い鼻で、菜乃香は初めて見るそれに食べられるんじゃないかと怯えながら受け取った。
「よかったね、菜乃香ちゃん。ピエロさんにありがとうは?」
まるで幼稚園の先生みたいな澤見の誘導で菜乃香は口を開いた。
「ありがとぉ‥‥‥」
もじもじする菜乃香の頭を優しくピエロは撫でた。
「どういたしましてだって」
胸に左手を当ててお辞儀をするピエロの動作を通訳する澤見。
「えへへっ」
菜乃香にはその姿が滑稽に見えて、思わず笑った。
「さあ、みんな風船はもらったかな?」
男の看護師が子供たちに声をかけると、みんな手を上げた。
「はあーい!」
元気な声が一斉に聞こえた。みんな満面の笑みでピエロを見ている。
「よし、じゃあ今度はここに来られないお友達にも見せてあげなくちゃ。だからみんな、少しだけ待っててくれるかな?」
ピエロは男性看護師の言葉に合わせてジェスチャーを付けている。
「うん」
「え~っ」
「わーい」
子供たちの声が疎らに聞こえてきたため、ピエロは耳に手を添えて子供たちの方へ向けた。それに合わせるように男の看護師は言葉を付け加えた。
「おや?返事が聞こえないなあ‥‥」
すると子供たちは急に大声を出して『はーい』という返事をした。ピエロは口を大きく開け、ワオッと驚く手振りをし、バイバイをして部屋を出た。
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