眠りの朝

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 その瞬間、神戸の目の前が急に暗黒と無音の世界に変わり、手や足の感覚もなく自分が立っているのか座っているのかさえも分からなくなった。  どれぐらいの空間であるのかも分からないそこには、ただサーッとテレビの砂嵐のように、耳の中からするその音と血の気が引く感覚とで気持ち悪くなる。  何が?  何だ?  何で?  脳内物質のドーパミンもアドレナリンも全てが彼の中で暴れ回ってごちゃ混ぜになっているのではというくらい、頭が今にも破裂しそうになって駆け巡る。  駆け巡る。駆け巡る。  人殺し?  誰が?  僕が?  言葉の意味を理解すると共に胸の奥がギュッと収縮するような感覚と、身体全体が凍えるような寒さに襲われた。  殺す?何で?どうして?  違う。僕は助けたかったんだ。  葉月ちゃんを。  でも助けられなかった。  これは僕のせいなのか?  僕が殺したのか?  嘘だ。  違う。  夢だ。  これは夢だ。これは悪夢だ。これは罠だ。  僕を狂わすための。  そうだ。そうに違いない。  ――人殺し。彼女はおまえのせいで死んだんだ――  よせ、止めろ。止めてくれ。  ――赤い血を見ただろう?小さな身体から流れていく血を――  違う、輸血が間に合わなかったんだ。  ――おまえはそれの吸引を指示しただろう?――  違う。僕は、何も間違った事はしていない、筈だ。  ――でも助けられなかっただろう?なら、それはただの言い訳だ――  そうなのか?  僕が原因か?  僕は人殺しなのか?  どうにも叫びようもない感情が一気に押し上げる。声を出そうとも自分の形さえ成し得ていないこの姿では、手も足も身体も鼻も口もない。  ただ速まる自分の鼓動や血の気が引く音、暗闇は感じる事ができる。
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