フラッシュバック

4/11
前へ
/260ページ
次へ
「あなたが私を酷いと罵るのは勝手だけどこれが現状よ。言い方は悪くても、少なくとも私は間違った事は言ってないわ。分かったなら、あなたも早く仕事に戻りなさい」 一ノ宮はそう言い放ち、仮眠室を出た。 ガチャッという音にただ反応するだけの神戸の近くに澤見は行き、しゃがんだ。 「‥‥‥だからって、酷い‥‥‥」 「‥‥‥‥‥ないている、の‥‥です‥‥か?」 澤見の耳元に微かな声がした。 下を向き覆っていた手を素早く退けて顔を上げた。布団の隙間から神戸はこちらを覗いている。 「‥‥かんべ‥‥せ‥‥」 声にならずに澤見の目からは涙が流れた。 「ぼくが‥‥いるから‥‥みんな‥‥‥ぼくが‥‥わるい‥‥‥‥」 澤見は必死に顔を横に振ったが、涙で声は出なかった。 「す‥‥み、ませ‥‥ん。す、み‥‥ま‥‥せん‥‥‥」 ただひたすら謝る神戸の微かな声だけが聞こえた。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加