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それからどのくらい経ったのだろう。
仮眠室に澤見の姿はなく、外はもうすっかり明るくなっていた。
神戸はふと包まっていた布団を剥いだ。
まだ恐怖で震える身体で起き上がり、ベッドの下にあった靴に足を入れた。
小刻みに揺れる手で、なかなか履けない靴に苛立ちを覚えた。
「ぐっ、そっ‥‥」
神戸は自分の不甲斐無さや馬鹿さ加減といったものに苛立っていた。
そして自分を責めていた。
どうして僕はいつもこうなのだろう。本当にどうしようもない‥‥‥。
やっとの思いで靴を履き、立とうとすると今度は足が縺れて転んだ。
ダンッ!
「ぐっ、う‥‥」
床に身体は叩き付けられ、痛さと色々な感情から神戸は涙を流した。
どうして僕はいつも‥‥‥。
そんな自分が情けなくて、悔しくて。声を押し殺すように彼は独り静かに泣いていた。
昔‥‥‥幼い頃、泣くと親にうるさいと怒られた。そこからの習性で彼はひっそりと泣くという事を覚えた。
誰にも気付かれないよう、自分の感情全てをそこに溶かして流し出す。
彼にはそうする事しかできなかった、そうする事で平然を装うしか術がなかった。
学校でも家でも罵られ、誰も助けてはくれない中で、それは勝手に身に付いた。
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