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「‥‥‥澤見さん?僕?」
佐藤は普段、澤見の事をゆりっぺ、自分の事はオレと言っている。
「あ、いや。やー、今日は暑いですねっ」
そう言って自分の席に向かう佐藤の腕を澤見は掴んだ。
「こら、話はまだ終わっていない」
「佐藤君!」
澤見と小林に睨まれ、その威圧に負けて後退りする佐藤は自分の席の椅子に倒れ込むように座った。
「わ、わ。すみません!」
佐藤は両手を待った、のように差し出すと二人の顔を見た。
「‥‥‥僕はただ、澤見さんは堂々とした男らしい人が好きですよって、神戸先生にアドバイスしてあげただけです」
澤見と小林は顔を見合わせた。
「本当にそれだけ?」
小林は興味津々に佐藤を見る。その問いに佐藤は頷いた。
「今日、朝、神戸先生と話したんです。そしたら、澤見さんの事だけすごく興味を持って話すので‥‥‥神戸先生はもしかしたら澤見さんの事、好きなんじゃないかって思って」
「え?」
澤見は目を見開いてパチパチさせた。
「佐藤君‥‥神戸先生の事、良く思ってないんじゃ‥‥‥?」
昨日とは全く違う表情を見せる佐藤に戸惑い、小林は疑問を投げ掛けた。
「ああ。葉月ちゃんの事は‥‥‥僕の一方的な勘違いでした。神戸先生って結構真面目なんですね。だから、今日は謝りに行ったんです」
「‥‥それじゃあ今、佐藤君は神戸先生の事‥‥どう思っているの?」
「どうって?」
「‥‥‥その、彼をどんな風な目で見ているの?‥‥」
小林は何かに躊躇している様子だった。佐藤は少し考えてから彼女の言葉に答えた。
「‥‥おもしろい方だと思います。独り暗い闇の中で一生懸命光を探す事に夢中になって、自分自身が光っている事に気付いていないような‥‥その光にみんな集まってきている事にも気付いていないような、そんな人だと‥‥‥」
そう口にして、佐藤が頭を上げると二人は笑っている。
「えっ?僕‥‥何か変な事言いました?」
「いいえ。全くその通りだと思うわ」
小林は首を横に振り、微笑んでいる。
「っていうか、だからって、あまり神戸先生に変な事吹き込むんじゃないわよ!バカ佐藤」
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