鎌倉へ

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「おまたせー」 彼氏は中学の同級生だ。だから、家まで自転車で10分くらい。当然、彼氏もそれくらいで来ると思っていたのだが、実際には30分もかかっていた。 「あ、うん。大丈夫?」 心なしか顔色が悪い。けれども、顔ははしゃいでいる。このギャップが、彼氏にそれ以上、言葉を発することを制限させた。 「大丈夫、大丈夫。早く乗って」 「うん」 助手席に収まる彼氏。そして、空を見上げた。 「これってオープンカー?」 「うん、ルパンの車も屋根が開いたから真似したの」 「そうなんだ」 ルパンは好きでよく見ていたが、彼女ほどの熱の入れようはない。彼女の熱にやや押されていた。 そして言うのだ。 「免許取ればいいのに」 彼はわりと合理的だった。都会にいる限り、電車があれば、たいていのところに行ける。それも眠りながらでも行ける。それなら、わざわざ自分で運転するのはナンセンスだと考えていた。だから、言葉を濁すだけで明確な答えはせずにいた。
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