第1話

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「ピピピッ、ピピピッ、ピピピ…」 執拗に鳴り続けるアラームの電子音で、目覚めた。 横たわったまま手探りで、壁際のアラームを止め、その並びのテレビのスイッチを押す。 片手枕で、14インチの備え付けのテレビから流れ出すワイドショーの声に、耳を傾ける。目は閉じたままだ。 思いきって目を開けると、半身を起こし、枕元のタオルを手に、四つん這いで、ブラインドを開け、梯子段を下りる。 スリッパを履き、タオル地のガウンの襟元を直す。 テレビは付けっ放しで、自分のカプセルを後にして、エレベーターで1Fへ。 フロントの前を通って、地下のサウナへと向かう。 蜂の巣のようなロッカーに、脱いだガウンとパンツを丸めて置き、垢こすりと使い捨ての歯ブラシ、髭剃りを手に、シャワーへ。 体を洗い、洗髪、髭剃り、歯磨きを済ますと、サウナへは入らず、適当に湯船に浸かってから、サウナを出た。 カプセルに戻って、時刻を確認すると、9時20分。片手枕で、見るともなしにワイドショーを見て、9時40分になったら、カプセルを出た。 着替えて、リュックを背負い、エレベーターで、フロントへ。 清算を済まして、外へ出た。 曇ってはいるが、まだ降り出してはいない。カプセルの前の道を、駅の方に向かい、行きつけの喫茶店に入る。 備え付けの新聞を読みながら、モーニングセットを食べ、10時を少し過ぎてから、店を出た。 いつものパチンコ屋へは、そこからすぐだ。 既に開店待ちの客は、店に入ったらしく、外に行列はない。 「海」のコーナーは、人付きが良いが、3台に1台くらいは、空いている。 ざっと前日の大当たり回数を目で追い、適当な台に座る。特に意味は無く、儀式のようなもので、前日の大当たり回数と、今日の大当たりには、何の関係もない。前日30回当たった台が、その後の二日間も35回、33回と当たったこともあったし、二日連続大当たり無しというひどいのもある。 今日は、入り口から3番目の台にした。前日5回、前々日8回の台だ。 リュックをコインロッカーに入れ、一万円札を投入し、打ち始めた。
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