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翌日、いつもどおりに9時に出社した私の前には、葉山課長と中村君の姿。
葉山課長は、昨日とは一変して、いつもの嘘くさい笑顔を浮かべている。
まるであてつけのような、大きな湿布を頬に当てながら。
「葉山課長、その顔どうかされたんですか!?」
「ああ、これね……。昨日の夜、たまたま出会った肉食獣と戦った痕跡だよ。」
そう言うと、彼の視線がちらりと私を見据え、小さくほくそ笑む。
私に聞こえていると認知して、わざとそうしているようにしか思えない。
「肉食獣……ライオンにでも、遭遇したんですか?」
「いいや。ライオンよりもっと獰猛な野獣だった……」
「なっ……!?」
別件で打ち合わせを始めようとしていたのに、嫌でも耳に入ってきたふたりの会話に、思わず変な声を上げてしまった私。
その声に呆然とするのは、目の前にいた後輩ふたり。
「係長、どうかしましたか?」
「え!? ううん、何でもないよ!」
駄目だ……私。
あんな男のペースなんかに、巻き込まれてはいけない。
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