触れられぬ傷と過ち

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. 階段の前で大声叫んでしまった私を、後ろから宥める声が聞こえてくる。 振り向くとそこには、相変わらず暢気な野木部長が立っていた。 「ん、何を騒いでいるんだ?」 「野木部長! 聞いてくださいよ、葉山課長が……」 「葉山君がどうかした?」 葉山課長が、セクハラまがいの発言ばかりしてきます…… ……って!! そういう既成事実を作ってしまったのは、何を隠そう私自身だ。 本当のことを言うと窮地に立たされるのは、私も同じなのだと気づいて口を噤んでしまう。 「……いえ、何でもないです。」 「何だよ、変なやつだな。」 そう言いながら、野木部長は私の頭をわさわさと撫でてくる。 まるで愛犬を可愛がるように。 私……もしかして、ペット扱いですか? 「ま……葉山君に相談するのもいいけれど、少しくらいは俺のことも頼れよ? この部署でお前といちばん付き合い長いのは、俺なんだからさ。分かったら返事は?」 「……はい。」 .
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