22908人が本棚に入れています
本棚に追加
.
階段の前で大声叫んでしまった私を、後ろから宥める声が聞こえてくる。
振り向くとそこには、相変わらず暢気な野木部長が立っていた。
「ん、何を騒いでいるんだ?」
「野木部長! 聞いてくださいよ、葉山課長が……」
「葉山君がどうかした?」
葉山課長が、セクハラまがいの発言ばかりしてきます……
……って!!
そういう既成事実を作ってしまったのは、何を隠そう私自身だ。
本当のことを言うと窮地に立たされるのは、私も同じなのだと気づいて口を噤んでしまう。
「……いえ、何でもないです。」
「何だよ、変なやつだな。」
そう言いながら、野木部長は私の頭をわさわさと撫でてくる。
まるで愛犬を可愛がるように。
私……もしかして、ペット扱いですか?
「ま……葉山君に相談するのもいいけれど、少しくらいは俺のことも頼れよ?
この部署でお前といちばん付き合い長いのは、俺なんだからさ。分かったら返事は?」
「……はい。」
.
最初のコメントを投稿しよう!