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その問いかけに、ふっと小さく微笑みを見せる藤川さん。
ずっと前に貰った彼女の名刺。
確か下の名前は、薫さんだったような気がする。
この人に合った素敵な名前だなと、そんなことを暢気に考えていたことを思い出した。
「……やっと気づいた。お久しぶりね、悠君。」
「久しぶり……って、こんなところで何してんの? どうして横浜に……っていうか、清和堂の社員だったの!?」
「話していなかったっけ?」
「聞いてないって。マジで驚いたしー。」
どうやらふたりは顔見知りのようだ。
しかも葉山課長の口調からすると、かなり深い関係の。
前に葉山課長の話題になった時、藤川さんは少しもそんなこと言っていなかったのに。
するとその辺りの弁明を、彼女は始めてくれた。
「彼のことは噂でしか聞いていなかったので、苗字は同じでも、まさか本人だとは気付かなくて。何も言わずに申し訳ありません。」
「そうだったんですか……。」
「実は私たち、共通に知り合いがいまして、それで何度か顔を合わせたことがあるんです。」
「共通の知り合い……ですか。」
「ええ、彼がまだ大学生だった頃に。」
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