触れられぬ傷と過ち

15/26
前へ
/624ページ
次へ
***** 予定していたスケジュールが押してしまい、昼休みに入るのが少し遅れてしまった。 見当たらない侑香ちゃんの姿を探しながら、会社の中をうろうろしていると、彼女が階段から上ってくるのが見えた。 「待たせてごめんね!」 「こちらこそ、急にすいません。」 「お昼、もう食べた?」 「いいえ。これ買ってきたので、一緒に食べませんか?」 そう言って見せてくれたのは、会社の隣にあるカフェの紙袋。 中には、私が好んで良く食べているBLTサンドが2人分入っていた。 そのままデスクで食べても良かったのだけれど、話があると言ってきたので、そういうわけにもいかない。 他の人に聞かれたくないような話だったら、拙いと思ったから。 使用していない会議室を場所に選び、私たちは日の当たる窓際の席に隣同士に座った。 自販機で買ってきたカフェオレを一口飲むと、侑香ちゃんはその小さな口を開いた。 「小峰部長が来られた日、私……情けないけど泣いてしまったんです。 自分なりに一生懸命に仕事をしてきたのに、あんな言い方されて……。 まるでこの5年間を否定されたみたいで悔しくて。」 .
/624ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22907人が本棚に入れています
本棚に追加