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「うん……。」
「その夜、彼に会いに行きました。何も言わずにずっと傍にいてくれて……」
知っているよ、全部……。
泣いている彼女を放っておくようなこと、裕樹はできない人だから。
そういう優しい人だから。
だから私との関係も、切り捨てられずにいたのだ。
「それで、その時に……プロポーズされたんです。」
「……そっか……良かったね。」
それも、知っているよ。
結婚を機にケジメをつけたいからと、本当の別れを告げられたのだから。
でも、それと同時に……
私の壊れた心を救ってくれたのは、葉山課長だった。
彼がいてくれたから、私は今もこうして何とかやっていけているのだと思う。
「侑香ちゃんも結婚かぁ。どんどん先越されちゃうなぁ……」
わざと自虐ネタを振舞うように、明るい口調で言ったつもりだったのに。
侑香ちゃんは急に顔を俯けた。
その声が、微かに震えていることに気づく。
「私……まだ、迷っているんです。」
「え……?」
「彼との、結婚。」
「どうして!?」
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