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「私、春華さんに比べたら全然仕事できないけれど……この仕事が好きだから続けたいんです。」
その言葉に、行きつく疑問はたったひとつ。
けれども裕樹の性格上、それは考えにくい。
彼は束縛なんて絶対にしない。
相手のことを信じて、優しく見守ることのできる人だから。
「もしかして……仕事を辞めて、家庭に入って欲しいって言われたの?」
「違います。ただ……」
「ただ?」
「私なんかが、彼に……裕樹君に相応しいなんて思えないんです。自信がないんです。」
「どうして……」
自信がないなんて……。
あれだけ裕樹に大切にされているのに、そんな風に思うなんて変だよ。
そう言いたかったのに、言えなかった。
私はと裕樹との関係は、侑香ちゃんには絶対に言えないから。
かつて恋人同士だったことも、別れた後も身体の関係を持っていたことも。
その時、侑香ちゃんが顔を上げた。
目には、今にも零れ落ちそうな涙が浮かんでいる。
「だって裕樹君は……春華さんと、付き合っていたんですよね……?」
「……。」
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