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侑香ちゃんの前では、特に気を付けていたつもりでいた。
それはきっと、裕樹だって同じだ。
彼女が知る余地などないと、過信すらしていたのに……。
「ずっと前に、裕樹君の部屋を掃除していたら……写真を見つけてしまったんです。」
「写真……?」
「古いアルバムの中に挟んでいた、春華さんと裕樹君が恋人同士みたいに寄り添いながら映っている写真。」
「……。」
裕樹自身も忘れていたのかもしれない。
そういう過去の思い出が、まだ部屋の中に残っていたことを。
そうじゃないと、そんなヘマをするわけがない。
侑香ちゃんの口から語られる事実に、私は返事に戸惑った。
あくまで白を切り通すか、それとも本当のことを正直に話すべきか。
「私、裕樹君に訊きました。春華さんと付き合っていたのかって。
そうしたら彼、正直に話してくれました。」
ここまで確信を突き付けられて、これ以上誤魔化し続けるのは逆効果だろう。
私にとっても、裕樹にとっても。
だから彼は、真実を告げたのだろう。
彼女を本当に愛しているから。
私も同じだ。
侑香ちゃんのことが好きだから、嘘は重ねたくない……。
「……ごめん。」
「そんな……謝る必要なんてないです。
春華さんは優しいから、私のために言わずにいてくれたんですよね?」
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