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侑香ちゃんは、私のことを買い被りすぎだ。
言えなかったのは、後ろめたい気持ちがあったから。
別れを告げられてもなお、やめることのできなかった身体の関係に。
本当のことを言えずに黙り込んでいると、彼女の悲しげな視線とぶつかった。
「……私は、春華さんみたいに素敵な人にはなれない。誰もが憧れるような、格好いい女の人にはなれない……。」
「……。」
「春華さんが上手くいかなかったのに……こんな私が、裕樹君とやっていけるのかなって。
不安で仕方ないんです……。」
だから、プロポーズを素直に喜んで受け容れられなかった……と。
今にも崩れてしまいそうな声を漏らす。
涙を我慢しようと、それでも我慢し切れなくて微かに肩を震わせながら。
どうしよう……私のせいだ。
侑香ちゃんをこんな風に追い込んでしまったのは、私の弱さの代償だ。
本当は、まだ完全に吹っ切れたわけではない。
ふたりのことを想うと、胸の奥がズキンと鈍い痛みを放つ。
でも……。
「……侑香ちゃん、それは違うよ。
私たちが上手くいかなかったことには、それなりの理由があった。
けれども私と侑香ちゃんは違うでしょ?
私が駄目だったからって、侑香ちゃんが同じようになるって決まったわけじゃない。」
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