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私には、侑香ちゃんの背中を押す義務がある。
私なんかを相手に劣等感を抱いて、自信を無くして、本当の気持ちから逃げ出そうとしている彼女を、放っておくなんてできない。
それが、自分の心を抉る結果になったとしても……。
「それに……私は、そんな言葉を貰えなかったから。」
「え……?」
「侑香ちゃんよりも長く付き合っていたのに、結婚して欲しいなんて一度も言われなかった。
だから……その時点で、私と侑香ちゃんは裕樹にとって違うんだよ。」
「……。」
「もっと自分に自信持ちなよ。
私は……そんな風に素直に悩んだり、不安を曝け出したりできる侑香ちゃんのこと、凄く魅力的だと思う。」
本当に、そう思うんだよ……。
何度も、代われるものなら代わりたいって思った。
裕樹の愛情を独り占めしている彼女に、本気で何度も嫉妬した。
けれども、裕樹も侑香ちゃんも、私にとっては大切な人だから。
心から幸せを願っていたいと思ったから……。
「……私の分まで、幸せになってよ。」
少しだけ無理をしながら、強がりで固めた言葉を口にする。
でも、その言葉に嘘はない。
ひとりになれば、もう二度とは触れられない温もりを思い出して、涙が込み上げてしまう夜もあるかもしれない。
それでも私にとっては、彼女に嘘を重ねていくより、ずっと良いから……。
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