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「春華さん……」
「泣いちゃダメだよ。涙は……彼に自分の気持ちを伝えるときまで、取っておきなよ。」
そう言って、私は鞄の中からハンカチを取り出した。
それを素直に受け取り、溢れ出す涙を隠そうともせずに拭う侑香ちゃんを、心底可愛いと思う。
「私……春華さんのこと……やっぱり大好きです……。」
「……。」
「これからも、ずっと……です。」
侑香ちゃんが、最近まで続いていた私と裕樹のことを知っているのか、そこまでは分からなかったけれど。
純粋に向けられているその言葉を、私は照れながら受け取った。
「ふっ……そんな涙目で告白されちゃったら、ドキドキしちゃうじゃん。
あ……これ早く食べなきゃね! 昼休み、あと15分しかないし……」
「はい……。」
侑香ちゃんが買ってきてくれたBLTサンドを急いで口に含み、良く噛んでから飲み込む。
ずっと胸の奥につっかえていた気持ち共に。
「午後からはユナイテッドの写真撮影だっけ? 六本木まで行くの?」
「そうです。商材用の撮影だけなので、そこまで時間はかからないと思います。」
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