触れられぬ傷と過ち

21/26
前へ
/624ページ
次へ
. 「春華さん……」 「泣いちゃダメだよ。涙は……彼に自分の気持ちを伝えるときまで、取っておきなよ。」 そう言って、私は鞄の中からハンカチを取り出した。 それを素直に受け取り、溢れ出す涙を隠そうともせずに拭う侑香ちゃんを、心底可愛いと思う。 「私……春華さんのこと……やっぱり大好きです……。」 「……。」 「これからも、ずっと……です。」 侑香ちゃんが、最近まで続いていた私と裕樹のことを知っているのか、そこまでは分からなかったけれど。 純粋に向けられているその言葉を、私は照れながら受け取った。 「ふっ……そんな涙目で告白されちゃったら、ドキドキしちゃうじゃん。 あ……これ早く食べなきゃね! 昼休み、あと15分しかないし……」 「はい……。」 侑香ちゃんが買ってきてくれたBLTサンドを急いで口に含み、良く噛んでから飲み込む。 ずっと胸の奥につっかえていた気持ち共に。 「午後からはユナイテッドの写真撮影だっけ? 六本木まで行くの?」 「そうです。商材用の撮影だけなので、そこまで時間はかからないと思います。」 .
/624ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22891人が本棚に入れています
本棚に追加