触れられぬ傷と過ち

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. この件に関してはこれ以上、触れないでいて欲しい。 そう思って強引に話題を変えた。 「で……私を探していた理由は……?」 私からの問いかけに、葉山課長は用件を思い出したかのように、パッと表情を変える。 それが彼の、仕事モードへの切り替えのサインだということに、最近になって漸く気付き始めた。 生意気な年下男から、頼り甲斐のある上司の顔へと変わる。 「あ、そうそう……和雑貨の店の件でクライアントの大島さんから連絡あった。 村田さんの提案してくれたプランでオッケー出たから、明日から本格始動だ。」 「え、本当ですか!?」 ずっとトラブル続きで、遅れ気味になっていた依頼だった。 特にミシマ不動産との一件では、この人の力添えがなければ、今も進行具合は難航していたかもしれない。 「忙しくなるから、本腰入れていこうな。」 「……はい。」 あまりの爽やかさに、目が眩みそうになった。 頷かざるを得ない、眩しすぎる笑顔。 私の返事を確認すると、彼は再び前を向いて歩き出す。 その背中に向かって話しかけた。 「それよりも……藤川さんと課長がお知り合いなんて、驚きでした。」 「俺も……。もう二度と、会わない人だと思っていたから。」 私の言葉に、葉山課長は振り返ることなく、前を向いたまま返事をしてくる。 少し切なげに響く、言葉と共に。 .
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