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居るんだったら、とっとと出てこいよ……。
そんな本音を隠しこみながら、わざと嫌味たらしい言い方をしてみる。
「ちょっと……呼び出しておいて、居留守ですか?」
「……。」
扉の向こうから現れた葉山課長は、私の記憶が正しければ、昼間と変わらない格好をしている。
しいていうならば、やけに服が乱れているのが気になるが……。
第二ボタンまで開いたワイシャツから、ちらちら見える色っぽい鎖骨。
そんなところに目がいってしまう自分を叱咤しながら、無反応な彼に強気に言った。
「しかも無視ですか? 大体、こんな時間に一体何が………」
そこまで口にすると、彼はふわっと私の身体に寄りかかってくる。
肩のあたりに顔を埋められて、身動きが取れない状況……って、あれ?
何かおかしい……。
「……って、身体熱すぎじゃないですか!?」
身体を離して彼の顔を覗き込むと、目がかなり虚ろなことに気づく。
しかも暗がりで良く見えなかったが、頬もいつもより赤みが差している。
「もしかして……熱、あるんですか?」
私の言葉に、彼はゆっくりと頷く。
その無口な素直さが何よりの証拠だった。
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