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喉を大きく鳴らしながら、苦い顔をしながら薬を飲み込んだのを確認すると、飲み残したゼリーを受け取りながら笑顔で話しかける。
「……はい。良くできました。」
「……。」
「これで少しはマシになると思うので、明日の朝イチで病院行って下さいね。付き添いが必要なら、また連絡してくれたら来ますから……」
一通りのことが終われば、帰るつもりではいた。
課長のことは心配だけれど、私がここにいても彼にしてあげられることは何もないから。
それなのに、立ち上がろうとする私を、熱くて大きな手が阻む。
「……ここに、いて。」
「え……?」
まるで、捨て犬のような瞳で見てくるものだから、不覚にも胸の奥がキュンとなった。
結局そのまま立ち上がらずに、ベッドの脇に座り込む。
そっと触れた頬は尋常でないくらい熱い。
この状態で置いていくのは拙いか……。
そう思いながら暫くそのまま彼を見つめていると、荒れていた呼吸が徐々に落ち着いてきた。
その代りに、閉じられた目元から一筋の涙が零れ落ちた。
切なげに響いた、寝言と共に。
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