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「私、そろそろ帰りますね………」
「今日、予定ある?」
帰ろうとしている私に、彼が話しかけてくる。
マッサージに行くつもりだったが、それしか予定のない寂しい女だと思われたくなかったので、言わないことにした。
「……特にはないですけど。」
特に何もないもの、それはそれで寂しすぎるな……。
言ってから、自分の盲点に気づいたが、もう遅い。
嫌味を言われる覚悟をしていると、彼の口からは思いも寄らない言葉。
「じゃあさ、午後からどこか行かない?」
「え……?」
「一晩付き合ってくれた御礼がしたいんだけど。」
御礼……って。
あの『課長』が……?
気持ち悪すぎる。
何か魂胆でもあるのだろうか?
余計なことには関わらない方が賢明だと、遠慮がちに断ってみる。
「そんな、別に構わないですって……」
「たまにはいいじゃん。気分転換にさ。」
「……。」
「行きたいところとか、ないの?」
行きたいところと言われて、私の頭に浮かんだのはたったひとつ。
正直に話してみた。
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