動き出した時計

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***** 家に着き、ポストの中を確認した。 そこには王子に渡した鍵が入っていた。 王子にも悪いことをしてしまった。 今度、また店に顔を出しておくか……。 彼との一件を忘れたわけではない。 むしろ、忘れられるわけなんてないけれど、いつも通り振舞うことが、私が許された優しさなのだと思う。 部屋に戻りシャワーを浴びて、濡れた髪をタオルで乾かしながら、クローゼットの前で立ち止まる。 あれ…… これって、もしかしてデートってことだよね。 記憶をたどれば、私は裕樹と恋人として別れてから、デートというものした覚えがない。 王子とは何度も遊びに行っていたけれど、それは高校時代から頻繁にあったことなので、デートという言葉は似つかわしくない。 それに葉山課長と私の関係は、『友達』ではない。 上司と部下。 そして、都合のいい時だけ抱き合う、身体だけの関係。 人には言えない関係だった私たちが、こんな昼間から外で会う約束をしたことに、深い意味はなくても違和感を抱いた。 楽な恰好にしようと思ったけれど、目についたワンピースを手に取る。 張り切っているわけではないけれど、恐らく私服もお洒落であろう課長に、見劣りするような恰好はしたくなかった。 ただ、そんな『女』としての小さなプライドだった。 .
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