偶然の再会

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. お前の存在の有無なんか、考えて行動してないっつーの。 そう思いながら、目の前に差し出されたギムレットを一口飲んだ。 「……可南子さんに敵う人には、なかなか出会えないか。」 輔の言葉に、もう一口だけアルコールを含んだ。 愛しい笑顔を脳裏に思い描きながら。 「あいつは、今でも俺にとっては特別な女だから。」 「……。」 「代わりなんて、どこにもいねーよ。」 「まぁ、悠のこと更生させるくらいの人だからねぇ……。」 俺には、可南子が残してくれた2年分の想い出がある。 たったの2年間。 けれども、俺が今まで生きてきた中で、最も価値のある2年間だ。 俺の退院祝いにと、外出許可をもらって初めて出かけたデート。 授業をサボって彼女に会いに行っては、いつも渾身の拳骨を食らって半泣きにさせられたこと。 けれども素直に反省して落ち込んでいると、温かい笑顔で優しく抱きしめてくれるところ。 彼女との想い出を振り返るだけで、こんなにも胸の奥が温かくなってくる。 それと同時に、彼女のいないこの現実に、絶望的な気持ちにもなるんだ。 可南子……。 もしも願いが叶うなら…… 今すぐお前に会いたいよ―――。 .
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