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月曜日、出先から会社へ行くと、デスクには仕事モード全開の橘さんがいた。
いつもなら出社時に業務連絡をするのが日課なのだが、近づき難いオーラを放っていたので、今はやめておくことにした。
もう、先日の一件は吹っ切れたみたいだな……。
それから俺も山積みの仕事に手を付け始め、あっという間に午前が終わった。
昨日遅くまで輔のところで飲んでいたこともあって、食欲があまりなく、昼飯は摂らずに喫煙室へと向かった。
『煙草は身体に良くないから、吸っちゃダメ!! 早死にしたくないでしょ!?』
そう言いながら、可南子は俺の煙草を奪い、ごみ箱へと平気で捨てる。
買ったばかりのものを捨てられたときは、流石に俺も怒って文句を吐いたが、彼女は笑顔を崩さずに哀しい言葉を重ねる。
『ゆーちゃんには、私の分まで1日でも長く生きて欲しいからね!』
長くは生きられない彼女にそう言われて、反論する言葉が見つからなかった。
それ以来、俺は煙草が吸いたくなくなった。
彼女の言葉は、どんな禁煙テラピーよりも効果があった。
けれども彼女が亡くなってから、俺はまた煙草を吸い始めた。
彼女のいないこの毎日で、1日でも長く生きる価値なんてないも同然だと思ってさえいたから。
すると、そこに橘さんの姿が見えた。
どうやら、村田さんが来社したことを伝えに来てくれたようだ。
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