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「……よし、いつも通りだな。」
俺の突然の言葉に、彼女は不思議そうに首を傾げる。
まるで、先日の出来事なんて、何もなかったかのように。
一応、一晩中ずっと傍にいてやったというのに……。
「俺からのレクチャーの甲斐があったか?」
「レクチャーなんて、されていませんけど。」
「もしかして、勘違いしてるんじゃないの?
キスやセックスすることだけが、レクチャーだって思っていた?」
俺がそう問いかけると、彼女は図星と言わんばかりに、気まずそうに視線を下げた。
勘違いするような言い方をしたのは俺だが、それを本気に捉えられるとも思わなかった。
「あんな風に、何もしなくたって満たされる関係もあるってこと。
俺はあなたに、そういうことを教えてあげたかった。」
「そういうこと……?」
「元彼との関係をやめられない、あなたの気持ちも分かる。
けれども、もっと自分のこと大切にしたほうが良いんじゃねーの?」
俺が偉そうに言える立場ではない。
けれども、まだ幸せになる選択が、彼女にはあるのだから……。
傷つく道に、自分から進んでいく必要はないのだから。
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