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その後、村田さんとの打ち合わせも無事に終了して、俺たちは再び夜に落ち合った。
俺と、村田さんと橘さん。
珍しいスリーショットには、ちょっとした思惑がある。
楽しげに会話を弾ませるふたり。
その裏では、橘さんとお近づきになりたいという、村田さんの綿密な魂胆があったのだ。
「橘さんて、本当は悠と付き合っているんじゃないの?」
「ハァ!? 有り得ませんって。」
明らかに嫌悪感丸出しの彼女の態度に、村田さんは更に陽気なテンションになる。
別に、いいけど……。
「でもさ、悠がこんなに素で接している人、俺ら以外に珍しいよな。」
「そう?」
「だってお前、基本的に猫かぶってんだろ?」
確かにそうだが……。
そこは「大人な付き合い方」を身につけたということで、評価して欲しい箇所でもある。
「無駄に敵ばかり作るんじゃなくて、何事も穏便に済ませるスマートさを覚えたんだよ。」
「じゃあ、どうして橘さんには素なんだよ?」
「それは、この人が……」
可南子に、似ていたから。
彼女に近づいたのも、可南子への想いがあってこそだ。
それ以外に理由なんてない。
忘れられぬ過去を封印したまま、そう正直に話した。
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