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「……ハァ、橘さんのこと……マジで好きになりそうかも。」
橘さんが席を外すと、首を長くして彼女の戻りを待っている村田さんが、独り言のように呟く。
完全に恋に落ちてしまった目をしながら。
「……相変わらず面食いだね、村田さんは。」
「彼氏とか、いるんだろうなぁ……。あんなに美人だもんなぁ……。お前、何か知っているか?」
「彼氏、ねぇ……」
彼氏はいないけれど、特別な関係の男ならいる。
けれども、その事実は彼にショックを与えると思ったし、俺の口から告げるべきことではないので言葉を濁した。
「もしかして、『彼氏は俺だ』とか言い出すんじゃないだろうな!? そんな冗談は、さっきので十分だぞ。」
「……。」
俺と彼女がキスをしたという事実を、冗談っぽく偽った。
村田さんの形相を見ていたら、冗談にせざるを得なくなったのだ。
どうやら、橘さんのこと本気で気に入っているみたいだし、ここは力になってあげたいのが……。
「……あの人は、難しいと思うよ。」
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