偶然の再会

6/30
前へ
/624ページ
次へ
. 「……ハァ、橘さんのこと……マジで好きになりそうかも。」 橘さんが席を外すと、首を長くして彼女の戻りを待っている村田さんが、独り言のように呟く。 完全に恋に落ちてしまった目をしながら。 「……相変わらず面食いだね、村田さんは。」 「彼氏とか、いるんだろうなぁ……。あんなに美人だもんなぁ……。お前、何か知っているか?」 「彼氏、ねぇ……」 彼氏はいないけれど、特別な関係の男ならいる。 けれども、その事実は彼にショックを与えると思ったし、俺の口から告げるべきことではないので言葉を濁した。 「もしかして、『彼氏は俺だ』とか言い出すんじゃないだろうな!? そんな冗談は、さっきので十分だぞ。」 「……。」 俺と彼女がキスをしたという事実を、冗談っぽく偽った。 村田さんの形相を見ていたら、冗談にせざるを得なくなったのだ。 どうやら、橘さんのこと本気で気に入っているみたいだし、ここは力になってあげたいのが……。 「……あの人は、難しいと思うよ。」 .
/624ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22900人が本棚に入れています
本棚に追加