22900人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「どうしてだよ?」
「なんとなく、そう思っただけ。」
終わった恋にいつまでも溺れている人間ほど、厄介な相手はいない。
俺が良い例えだ。
「お前さぁ……ここは俺と彼女の仲を取り持つとか、そういう発想はないわけ?」
「中学生じゃあるまいし。自分の恋愛くらい、自分で責任もって下さい。」
「くっそー。猫かぶり男め!」
そう言いながら、悔しそうにビールを飲み干す村田さん。
仕事は出来るし、面倒見も良いし、人付き合いも器用にこなす人なのに。
何故か恋愛だけは奥手。
そんな彼に、朗報を伝えておいた。
「まあ、あの人も村田さんのこと『穏やかな大人な男性』って言っていたし。印象としては悪くないんじゃねーの?」
「マジで!?」
「マジで。可能性としては、なくはないんじゃない?」
少なくとも、俺と彼女が付き合うよりは遥かに高い可能性がある。
まあ、いずれにしても、かなり低めの可能性に違いはないが。
俺からのエールに気分を良くした村田さんは、更にペースを上げてお酒を飲み続けた。
その結果、彼は完全に泥酔しきってしまった。
地獄絵図のような光景に、やや引き気味な橘さんの姿を見て、彼女の気持ちが揺れ動く可能性は、果てしなくゼロに近くなったと思った。
.
最初のコメントを投稿しよう!