偶然の再会

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***** 無事に家に送り届けたころには、村田さんは既に夢の中。 相変わらず汚いであろう部屋に彼女を上げるのは流石に気が引けたので、彼のポケットから鍵を借りて、その巨体を玄関先に放置して帰った。 「お酒入ると、別人みたいですね。」 「酒癖悪いんだよ、あの人。ひとりでテンション上がって、知らないうちに寝ちゃうんだよ。飲ませ過ぎたら駄目だったな。」 村田さんをフォローしてあげたいが、あんな姿を見せてはどうしようもない。 これ以上、彼のイメージが悪くなる前に、話題を変えることにした。 「あなたは意外と……いや、思ったとおり強いね。」 村田さんと同じペースで飲んでいたはずなのに、全く顔に出ていないし、まるで素面のようなテンションだ。 すると、彼女は口を尖らせながら、拗ねた口調で言い返してくる。 「……どうせ、可愛く酔ったふりなんて出来ませんよ。」 「別にいいんじゃない? 酔ったふりする相手より、美味しそうに飲んでくれる相手のほうが、お酒を共にするのは楽しいだろ。」 少なくとも、俺はそうだから。 男に媚を売りながら、自分を可愛く見せようと演出する女は好きじゃない。 その言葉に、彼女は意外そうな顔を浮かべた。 .
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