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「……お前、その顔どうしたの?」
輔が作ってくれた、ノンアルコールカクテルを口にしながら、俺はふと思ったことを訊いてみた。
彼の口元にある、痛々しい傷跡について。
「ん? これは……ちょっとした成り行き上の結果だ。」
「なんだそれ。」
意味不明な理由に更に疑問は深まるばかりだが、そこに参入してきたのはマスターだった。
特製の海鮮ちぢみを手にしながら。
「昨日の夜、お客さんとやりあっちゃって。」
「マジで? マスターに迷惑ばかりかけんなよなぁ。」
「まぁ、女性客に手を出そうとした、うちのバカ息子が100%悪いんだけど。
不運なことに隣に彼氏がいたんだよね。それで……」
それで、この傷……。
折角の店の雰囲気を壊しているのは、間違いなく輔だ。
俺がマスターなら、例え自分の息子でも出入り禁止にするだろう。
「彼氏の前でナンパとは、お前もいい度胸しているよな。」
「行動派と言ってくれ。俺は猪突猛進型だ。
それに、めちゃくちゃ良い女だったんだよ。あの彼氏よりも、俺のほうが絶対に満足させてやれるのになぁ……秘伝のテクニックで。」
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