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「あー、それは凄いね。」
「何だよ、その棒読みの感想は!」
どうでもいいことだったので、適当に返しただけだった。
輔の恋愛談義に今更、興味があるはずもない。
昔からずっと近くで見てきたのだから。
すると、グラスを磨きながら、彼は溜息交じりに言ってくる。
「俺も、黙っているだけで女が近づいて来ればいいのに。お前みたいにさ。」
「……それはそれで面倒だよ。」
「出た。モテる男の高飛車な発言だな! いつか美人でセクシーな彼女作って、お前をギャフンって言わせてやるからな!」
「俺にギャフンって言って欲しいわけ?
だったら何度でも言ってやるよ………ギャフン。」
真顔でそう言ってやると、輔は地団駄を踏みながら悔しそうな顔を浮かべる。
「うわー。マジでムカつく。何でこんな男がモテるわけ?」
「……俺にもわからん。」
「さては、その甘いルックスだな!? よし、俺がお前の顔を変形させてやる……任せろ!」
そう言いながら、輔は俺の両頬を持ち上げて全力で抓りだす。
まるで子供の喧嘩のような俺たちのやり取りを、マスターは楽しそうに穏やかな笑顔で見ていた。
ああ……。
俺の親父が、この人だったら良かったのに……。
いつも本気でそう思う。
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