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余計な事とは思いつつも、放っておけない。
上司としての情なのか、報われない想いを抱く彼女が自分の姿に重なるからか。
それとも、彼女に可南子の面影を感じるからか……。
「あんたはまだ、好きだったんだろ……その男のこと。」
「好きじゃない……」
「……どうして、そんなに意地張るんだよ。好きなら好きだって認めたらいいだろ?」
こんな時くらい自分の気持ちに素直になれば良いのに。
傷ついた時くらい、思いきり弱さを見せて泣いてしまえばいいのに。
そこまで、自分のプライドが大切なのか……?
すると、彼女は精一杯の強がりで、八つ当たりのような言葉を向けてくる。
「あなたになんかわからない。先のことばかり読んで、いつも余裕ぶっていて……」
「叶いもしない愛に、いつまでも縋っている気持ちなんてわかりたくもねーよ。」
そんなこと言う資格、俺にはない。
いつまでも過去の面影に縋っているのは同じだから。
けれども状況は違う。
俺は、見返りのない愛に溺れたりなんかしない。
「……だったら、どうすれば忘れられるっていうの?」
彼女の言葉に一考して、出てきた答えはひとつ。
前みたいに傍にいるだけじゃ、この人は元彼を心から消し去ることはできない。
仕事関係の女には、絶対に手を出さないと決めていた……が。
その方法しか思い浮かばなかった。
「……俺が、忘れさせてやろうか?」
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