22849人が本棚に入れています
本棚に追加
/624ページ
.
「で、私を探していた理由は……?」
「そうそう……和雑貨の店の件でクライアントの大島さんから連絡あった。
村田さんの提案してくれたプランでオッケー出たから、明日から本格始動だ。」
「え、本当ですか!?」
「忙しくなるから、本腰入れていこうな。」
「はい。」
そう言って、彼女は嬉しそうに笑顔を零す。
クロワッサンの時と同じ笑顔だ。
つられてこっちまで頬が緩みかけていると、彼女は思い出したかのように、ふと呟いた。
「それよりも、藤川さんと課長がお知り合いなんて驚きでした。」
「……俺も。もう二度と、会わない人だと思っていたから。」
会うと、色々なことを思い出してしまうから。
話したいことは尽きないくらいあるはずなのに、思い出すのが辛くて避け続けていた。
多分、薫さんも同じ気持ちだったと思う。
「もしかして、男女のわけありですか?」
「あの人とは、そういうのじゃないよ。あの人は……俺の婚約者と、親しかった人だよ。」
「婚約者……?」
「そう。ま……昔の話、だけれどね。」
.
最初のコメントを投稿しよう!