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「なぁ……あれから彼女、何か言っていた?」
「彼女って誰?」
「だから……」
村田さんの視線の先には、桜木さんにピッタリとマークされていて戸惑っている橘さんの姿。
村田さんといい桜木さんといい、何故に彼女をそこまで気に入っているのか。
男だらけの職場なだけに、女性に飢えているのだろうか……。
「……『彼女』は、別に何にも言ってなかったけれど。」
「俺の心配とかは!?」
「さぁ……覚えてない。」
曖昧な返事に、落胆の色が見える。
そんなこと、俺でなく本人に訊けばいいのに……。
けれども暫くの間は、桜木さんが彼女を手放さないだろう。
村田さんもそれを悟ってか、桜木さんを見つめる目が普段より3割増しで鋭い。
「……今日って、これで仕事終わりか?」
「いや、会社に戻らないといけないけど。どうして?」
「いやあ……もし予定がないなら、飯行かないかなぁって。」
遠慮がちな言葉の中には、明らかな下心。
俺一人を相手になら、こんな風に改まって訊いてこないはずだから。
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