忘れ得ぬ約束

3/34
22844人が本棚に入れています
本棚に追加
/624ページ
***** 「なぁ……あれから彼女、何か言っていた?」 「彼女って誰?」 「だから……」 村田さんの視線の先には、桜木さんにピッタリとマークされていて戸惑っている橘さんの姿。 村田さんといい桜木さんといい、何故に彼女をそこまで気に入っているのか。 男だらけの職場なだけに、女性に飢えているのだろうか……。 「……『彼女』は、別に何にも言ってなかったけれど。」 「俺の心配とかは!?」 「さぁ……覚えてない。」 曖昧な返事に、落胆の色が見える。 そんなこと、俺でなく本人に訊けばいいのに……。 けれども暫くの間は、桜木さんが彼女を手放さないだろう。 村田さんもそれを悟ってか、桜木さんを見つめる目が普段より3割増しで鋭い。 「……今日って、これで仕事終わりか?」 「いや、会社に戻らないといけないけど。どうして?」 「いやあ……もし予定がないなら、飯行かないかなぁって。」 遠慮がちな言葉の中には、明らかな下心。 俺一人を相手になら、こんな風に改まって訊いてこないはずだから。 .
/624ページ

最初のコメントを投稿しよう!