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「どうしてだよ?」
「だって、かなり競争率高いよ。会社でもかなり人気だし。」
これは本当のことだ。
自分のことに関しては鈍感な彼女は、全く気付いていないようだが。
ちなみに俺の信者でもある中村君も、橘さんとなら是非とも付き合いたいと豪語していた。
「もしかして、お前もか……?」
橘さんと村田さんのツーショットも悪くはないが、消極的な言葉を口にする俺に、彼が勘違いしてしまうのも無理はない。
「……俺は違うよ。」
「そうだよなぁ……。お前は可南子さん一筋だもんなぁ……。疑って悪かった。」
村田さんの言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。
彼よりも報われない恋愛をしているのは、俺自身なのだと。
「あ……桜木さんが消えた。今がチャンスだな!」
村田さんの表情が急に明るくなった。
そして、待っていましたと言わんばかりに、橘さんのところへ駆け寄る。
楽しそうに談笑しているのも束の間。
暫くして、再びふたりの姿に目をやると、橘さんが真剣な顔つきをしているのに気づいた。
食事を誘うことに必死になり過ぎて、失言してしまったのだろうか……。
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