忘れ得ぬ約束

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. 村田さんの失言疑惑が気になりつつも、1時間ほどで今日の打ち合わせは無事に終わった。 紅葉シーズンで人が賑わう小町通りを経由して駅へ向かう途中、ふと隣の人物の様子がおかしいことに気づく。 焼きせんべいにソフトクリーム。 和菓子の店頭販売……。 いつもなら食に関しては、センサーでも仕込まれているかのように反応するのに、今日の彼女は下を向いたまま歩き続ける。 他人の問題に口出しするつもりはないけれど、これは本気で拙いパターンかもしれない。 今後の仕事に影響が出ては困るので、それとなく彼女に訊いてみることにした。 「村田さんと、随分と深刻そうな顔で話していたけど。何か問題でもあった?」 「……いいえ、特には何も。」 予想外の返事。 もしかしたら、俺と村田さんが親しいことに遠慮して、隠しているのだろうか。 あくまで「村田失言説」を曲げない俺に、彼女は頼りない瞳を向けてくる。 「……ひとつ、訊いてもいいですか?」 「ん?」 「葉山課長は……誰かの温もりを、無性に欲しいと思うことってありますか?」 彼女が何故そんなことを訊いてきたのか、俺には全く分からなかった。 けれども、それが興味本位とかではなく、真剣に答えを求めているような気がしたから、正直に答えた。 「変な質問だなぁ。」 「……答えたくなければ、構わないです。」 .
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