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彼女からの大胆な発言に、一瞬戸惑ってしまったけれど。
視線を揺るがすことなく、真っ直ぐに俺を見据える瞳に、それを冗談として流すことは許されないと思った。
「今度は私が……あなたを抱いてあげたい。」
彼女が下心を持って俺を誘っているのなら、迷うことなく断っただろう。
しかし今は、それが一種の同情だと分かっているから、断る理由はないと思った。
この人とのセックスは嫌いじゃないし、腕の中にいる彼女はまるで普段とは別人のように可愛くて、少し愛しく思えてしまうから。
「それって、いつでもいいの? 例えば今夜とか。」
「……勿論、構わないです。」
「そう。じゃあ今日は、残業しないで早く退勤しないとね。ちなみに夜は、何か食べたいものある?」
「え? じゃあ……温かい鍋料理。」
「了解、任せて。」
俺がそう言うと、彼女はホッとしたかのように頬を緩ませた。
きっと、この言葉を口にするのに、相当の勇気を振り絞ったのだろう。
そう思うと、早く彼女を抱きたくて仕方ない衝動に駆られた。
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