エピローグ * 金木犀の香る季節に

2/6
22838人が本棚に入れています
本棚に追加
/624ページ
. 映画が始まると、開始10分でハルは寝てしまっていた。 私の肩に頭を乗せて、静かに寝息を立てている。 周りに人のいない後ろの席で良かった……。 全米が泣いたというキャッチフレーズに見事に騙され、私はポップコーンを食べるのに必死だった。 あーあ、ハルの言うとおりにアクションにすれば良かった。 けれども、隣で無邪気に眠る彼の姿を見られたから、まあいいか……。 映画が終わると、寝不足が解消されたのか、彼は軽い足取りで歩き始める。 「あ、ハル! アイス食べたい。」 「……また食うの? ポップコーンも1人で食べたのに。」 呆れながらも、彼は近くの店へと向かう。 そして、ふたり分のアイスを買ってくれた。 「春ちゃんは、チョコチップとバニラのミックス。」 「ありがとう! いただきまーす。」 そう言って、気分上々でアイスを頬張ろうとすると、後ろから何かがぶつかってきた。 危うく前方にバランスを崩しそうになるほどの勢いで。 え……何!? そう思って振り返ると、足元にいたのは小さな女の子だった。 涙目になりながら、私をじっと見上げている。 .
/624ページ

最初のコメントを投稿しよう!