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触れられぬ傷と過ち
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自分でもどうしたいのかわからない。
短時間に色々なことがありすぎて、頭の中が整理されないまま、こんがらがっている。
それなのに、私の心が妙に落ち着いているのは、この人の温もりのお蔭なのかもしれない。
抱いてやる……と、強引な言葉を選んだくせに。
車から降りてここに着くまで、ずっと優しく手を握っていてくれていた。
どこまでが彼の本性で、どこまでが虚像なのか。
今の私には正直分からない。
前回と同じラブホテルに連れてこられ、偶然空いていた同じ部屋を選んだ。
けれども状況は全く違う。
あの日は私を抱く気など全くなかった彼は今夜、私を抱くと断言しているのだから。
ベッドの上に並んで座ると、一息吐く間もなく押し倒される。
私の上に馬乗りに跨りながら、彼はネクタイとワイシャツのボタンを外した。
その下から現れたのは、想像以上に引き締まった腹筋と二の腕。
天は二物を与えずと言うが、この人の場合は例外なのかもしれないと本気で思う。
「スーツを着ている間は、上司と部下の関係じゃないんですか……?」
「そんなもの、脱いでしまえば関係ない……」
「……。」
すると、服の上から大きな手が胸に触れられる。
最初は少し遠慮がちに、そしてキスを求めながら、その行為はどんどんと積極的になっていく。
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