動き出した時計

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動き出した時計

. 電話で告げられた住所を、そのままタクシーの運転手に伝えた。 時間のせいか道は空いていて、スムーズに目的地へと進んでいく。 窓の外を覗きこむと、そこには夜の暗闇に反射して無表情な自分の顔が映り込んでいた。 到着したマンションは高台の上にあった。 603号ってことは、6階ってことだよね……。 そう思って、エレベーターに乗り込み『6』の数字を押した。 上昇していくにつれ、私の気持ちも幾分か緊張し始める。 血まみれで倒れていたら、とりあえず救急車かな……。 そうなれば警察沙汰にもなるだろうから、事情聴取とかされるのだろうか……。 私の想像の中では、葉山課長はすでに刺されていることが前提だった。 エレベーターを降りて一軒ずつ表札を確認しながら進んでいく。 すると603号室には、ローマ字で『HAYAMA』と掲げられていた。 無事に到着してホッとしたのも束の間、私はすぐにインターホンを鳴らした。 夜中に響き渡る音。 私だったら、不気味すぎて無視しているに違いない…………って、出ないし! 音沙汰のない部屋。 明かりは漏れているのに、物音ひとつしない。 3回インターホンを鳴らしたけれど、課長の応答はなかった。 悪い想像が、ますます膨らんでくる。 緊急事態も考えられると思い、御近所の迷惑にならないように気を配りながら、部屋の扉を叩いた。 すると1分くらいして、漸く中から鍵の空く音がした。 .
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