すれちがう片想い

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. 「悠は、美味しそうに何かを食べる女性に惹かれるのかな?」 「へ!?」 「可南子さんも、あんな風に美味しそうに食べる人だったから。」 触れてはいけないタブーを口にした彼は、瞬時にしまったといった風に表情を歪めた。 本音はもっと色々『カナコさん』について尋ねたかったけれども、この人には何も訊かないことにした。 ただ、ありのままの現実だけを、正直に口にする。 「課長は……私に興味なんて、1ミクロもないですよ。」 「そうかな? 俺にはそうは思えないけれど。」 「……。」 あるはずなんて、ない。 振り回されているのは、いつだって私だけだ。 もし仮に興味が1ミクロだけでもあったとして、それはきっと私が『カナコさん』に似ているからだろう。 ああ…… 考えていたら、だんだん悲しくなってきた。 こんな私の気持ちも知らずに、明らかにくだらない話で盛り上がっている葉山課長を、恨みを込めて一睨みしてやりたい気分だ。 そんな可愛げの欠片もない私に、村田さんは遠慮がちな声で訊いてきた。 「……勘違いだったら悪いんだけど。」 「はい?」 「橘さん、もしかして……悠に惚れた?」 .
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