22818人が本棚に入れています
本棚に追加
/624ページ
年下上司の表裏
.
突然やってきた年下上司。
世間的に女子受け良好間違いなしの、将来有望な好物件。
年の割に落ち着いた雰囲気で、その優しい笑顔は文句なしにイケメンで。
もし仮に私が20代半ばだったとして、特定の彼氏もおらずに仕事を生きがいとしていたとしたら。
そんな彼が直属の上司になった日には、必然的に運命を感じて恋に落ちていたに違いない。
女というものは、偶然という名のロマンティックな響きに弱い生き物だから。
「おはようございます、橘係長。」
けれども私はもう、運命なんて信じて突き進めるほど若くもなければ、恋愛にそこまで時間を費やしている余裕もない。
それに目の前にいるこの男は、私に最悪の印象をもたらしたのだから。
「……おはようございます。葉山……課長。」
出社時間、エントランスで会った彼は、爽やかな笑顔をしながら話しかけてくる。
その笑顔に胡散臭さを感じてしまったのは、鮮明に頭の中に残る一昨日の記憶のせい。
誰もが囚われてしまいそうな笑顔の裏に隠されたのは、悪魔の微笑。
会ったその日に、偶然会った女の唇を、簡単に奪ってしまうようなそんな軽薄な男に ―――
この心は、絶対に揺れたりはしない。
そう、信じていたのに。
.
最初のコメントを投稿しよう!