22809人が本棚に入れています
本棚に追加
/624ページ
はじめての涙
.
年末年始は、いつも千葉の実家に帰ることにしている。
特に今年は連休もお盆も忙しく、約1年ぶりの帰省となった。
都会からは少し離れた房総半島。
海の近くの小さな町だ。
「春おねーちゃん。お帰りなさいー!」
玄関に入るや否や、嬉しそうに駆け寄ってくれたのは5歳になる姪っ子。
姉の話だと、私が帰ってくるのが待ち遠しかったとか……。
「菫……少し見ない間に、大きくなったねぇ。」
「うん! ピーマン、ちゃんと食べてるから!」
「そっかぁ、偉いね。」
そう言いながら、小さな頭を撫でてあげる。
人には意外だと言われるが、子供の相手をするのは昔から好きなのだ。
特に菫のことは、我が子のように可愛がっている。
菫と手を繋いで一緒にキッチンへ向かうと、そこにはエプロン姿の母がいた。
「ただいま……帰ったよ。」
「あら、早かったのね。お昼はもう食べた?」
「ううん。お腹空いたぁ……あ、唐揚げだ!」
私の大好物の、母の手作りの唐揚げ。
きっと、この日のために準備しておいてくれたのだろう。
空腹には抗えず、まだ湯気の立っている唐揚げを頬張る。
.
最初のコメントを投稿しよう!