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最後の選択
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葉山課長が出張から戻った翌日。
顔を合わすや否や、目の前に差し出された紙袋。
「これ……何ですか?」
「何って……。あんたが、食べたいって言っただろ?」
その言葉に中を覗いてみると、可愛らしい赤い箱が入っている。
しかも2つも。
「……開けてもいいですか?」
「今? まぁ……別にいいけど。」
仕事前にもかかわらず、デスクの上に出した赤い箱。
蓋を開けると、小さな壺らしきものが入っていた。
何これ……可愛すぎるんだけど!!
「結構有名なプリンらしいから、不味くはないと思うんだけど……」
「絶対に美味しいですよ! この壺のフォルム……間違いないです。」
お洒落な容器に入っているお菓子に、ハズレなんて存在しない。
そんな持論を披露すると、課長はいつものようにフッと声を漏らしながら小さく笑う。
「まあ、気に入ってくれたならいいけど。食べ過ぎないようにね。」
「はい。ありがとうございます……。」
課長が放つ雰囲気は、今日も驚くくらいに穏やかで柔らかで。
前にも増して、まるで何かに吹っ切れたかのようだ。
神戸で、何かあったのかな……。
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