花咲く金木犀の下で

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***** 「んー! 今日の親子丼は、特に美味しいっ!」 「いつもと変わらないけれど?」 「そう? あ……空きっ腹だったからかな。」 そう言いながら、俺の前で幸せそうに飯を頬張るのは、高校時代からの付き合いの春。 何を隠そう、俺がずっと密かに想いを寄せていた『女友達』だ。 昔から、俺の作った飯を幸せそうに食べてくれる彼女の笑顔が好きだった。 学生の頃から飲食店でバイトをしていて、その流れで専門学校に入った。 いつか小さくてもいいから自分の店を持つという夢を叶えるために。 そして夢は3年前に叶った。 様々な伝手で知り合った店のオーナーに見初められて、この店を任されることになったのだ。 「ねえ、王子。」 「ん?」 「ずーっと思っていたんだけど。IZUMIって、泉のこと?」 店の名前「IZUMI」は、英語に訳すとspring。 つまり、春華の春だ。 店の名前がそんなところから来ているなんて、春自身は予想もしないだろうし、彼女自身に言えるはずもない。 「……そうだな、きこりの泉だよ。」 「きこり……あ、斧の話でしょ?」 「自分に正直に生きていたら、良いことあるんじゃないかって思って。」 苦し紛れの口から出任せの説明に、春は素直に納得してくれた。 本当……単純なやつ。 .
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