第11話

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「俺が送っていきます」 「バカじゃないの?」 瞬殺ともとれる声に迎えられると、もう口を開かない方がいいんじゃないかと思った。 「けど、たまにはいいかな」 項垂れた俺に満足したのか、由美さんはここで声を和らげ首を斜めにする。 「こんな日に恨まれそうだけど」 「絶対それ思ってないですよね」 立ち上がった由美さんの顔を見上げると、拓真が視線を下にした。 「預かっても中見るんじゃないわよ」 「どうしますかね」 嫉妬なのか、脅しなのか分からない声が俺の近くに落ちた。 「しっかし。あんなのつけないっしょ」 「少しくらい派手な方がいいの。……あんな地味なのばっかじゃつまんない」 「それ、由美さんの趣味じゃないんですか?」 「……何よ。憎たらしい。どっちも知ってるくせに」 口を膨らませた姿に満足したのか、奴がイスを前に引いた。 「触るなよ。殺されるぞ」 「うるさい。触らせないわよ。全然タイプじゃないもの」 冗談めかした拓真の前で、俺は内心ホッとしていた。 男受けする容姿に長身でバランスが取れた外見。 美人なことに変わりはないが、喜怒哀楽がはっきりしてる分、内面的にどこか愛莉と近い感覚がある。 気が強いところが少々玉に瑕(きず)であるようには思えるが、誰彼構わず媚びてくる女と比べると、このくらいストレートに気持ちを見せてくれる方が男としては有り難い気がした。
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