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「ささっ、着替えて」
「ちょっ、と待って!」
焦る私とワクワクとした様子で楽しそうに声を弾ませる叔母さん。
半ば強引にジャケットのボタンを外しにかかった叔母さんを思わず両手で制止してしまう。
「あらぁ、大丈夫よ。そのお洋服は私が処分しておくから」
言い方は優しいけど、叔母さんの声には凄みがある。
そのド派手な服を着せてでも、どうしてもこの服を脱がせたいみたい。
「私……帰る」
「ちょっと、愛莉ちゃん!?」
……このままじゃこの服が危ない
「ご馳走様でした、また来るね」
急ぎ早に玄関に向かうと、この上なくダサい姿に拍車をかけるように再び例のパンプスにつま先を入れた。
「ちょっと待ってて、これ理(おさむ)君に……」
バタンと扉がしまると、叔母さんの軽く怒ったような声が聞こえたような気がしたけど。
――絶対あのシチューを私に持たせようとしただけだろうから聞こえなかったことにした。
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